映画 スタンド・バイ・ミーのこと

初版 2018/09/17 09:10

改訂 2022/12/20 13:53

こんにちは、あゆとみです。

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ミューゼオのみなさんのコレクションにまたまたノスタルジーに火をつけるアイテムを見つけた。


1986年に公開(日本では1987年)され、世界中でスマッシュ・ヒットとなったスタンド・バイ・ミーだ。

タイトルを見ただけで、Ben E Kingのあの名曲が脳内に響いてくる人も多いだろう。前奏から鳥肌がたってしまうほど大好きな曲だ。


物語は、作家のゴールディー・ラチャンスがある新聞記事を目にしたところから始まる。

「弁護士のクリス・チェンバーズが刺殺される」

クリスはゴールディーの幼馴染であり、10代のかけがえのない時期を一緒に過ごした仲間だった。

幼少期の大事な記憶が蘇る。

当時の仲良し4人組で、「町のヒーローになれるかも」と行方不明の少年の死体を探しに出かけたあの夏の日のことをー

と、一見した内容だとある夏の少年たちの成長物語、という内容で、少年が主人公のものとしては、当時のヒット作によくみられたようなドキドキハラハラの派手なアクション・アドベンチャーがあるわけでもなく、宇宙人やロボットが出てくるわけでもなく、超常現象が起きるわけでもない、どちらかというと地味に日常の延長を地味に描いたストーリーにきこえるだろう。

ただ、スタンド・バイ・ミーにはそれだけでは終わらない深さというか、最後まで見たいと思わせる力があり、また見返したくなる奥行きがある。じわじわきて、記憶に残り続ける作品なのだ。

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だいちゃん

まずは主人公が一人一人個性豊かで魅力的だ。

子供を映画でそれを表現するのはとても難しい。よくある子供像の域をでない表現になることも多い。だが、スタンド・バイ・ミーに出てくる子供達は、まるでドキュメンタリーフィルムでも見ているように等身大の12歳がイキイキと自然体で描写されていると思う。

12歳はまだ幼い。だが何もわからないほど幼くはない。大人と呼ぶには程遠い。でも、ほんの少し大人の世界がわかってもきている。将来の夢を無邪気に言える時期は終わり、今やそれぞれが将来への不安を抱え、自分がやりたいことと、そのやりたいことを実現できるのか疑う心も生まれている。

スタンド・バイ・ミーに登場する12歳達は、人物像に深みがあり、リアル。だからこそ見続けたくなる。


印象的なシーンも多い。

主人公のゴールディーが創作した物語の中で、いじめられっ子が周囲に仕返しをするために大食い大会でパイを食べてげえっとなるシーンも強烈だったし、子供達がヒルに噛まれるシーンの衝撃ときたら、私の心にヒルへの恐怖を永遠に焼き付けたほどだ。

https://www.youtube.com/watch?v=V4jg8o9wXys


緑に囲まれた線路で鹿に遭遇するシーンも妙に記憶に焼き付いている。

ほかにはやはり、この作品が出世作となったリバー・フェニックスが登場する場面がとにかく強く印象に残る。

クリス・チェンバーズがくすねてしまった牛乳代を、思い直して返しに行ったにも関わらず、返した当の相手の先生にネコババされたことを語るシーンや、できのいい兄の影として生きてきて、両親からまるで眼中にない透明人間のように扱われていることの悔しさを打ち明ける主人公のゴールディーをクリスが励ますシーンなど胸にくる。

少し余談になるが、この作品にしても、同じ年に公開されたモスキート・コースト(少し成長している)にしても、あの頃のリバー・フェニックス(映画公開時が16歳だから15歳くらい?)には滅多にお見かけしないほどの鮮烈な輝きがあったように思う。

https://www.youtube.com/watch?v=qCkOQpQC4kA


スタンド・バイ・ミーが公開されるまでには紆余曲折のいばらの道のりがあったらしい。

当初この作品は「フラッシュダンス」のエイドリアン・ラインが監督をする予定になっていたのだが、他の作品とのバッティングで途中降板となった。

次に監督として白羽の矢が立ったのがロブ・ライナーだが、脚本を一読したのちに「焦点がぼやけている」と感じたのだという。焦点を誰にすべきかと考えた時、ロブ・ライナーは、ゴールディーという兄へのカイン・コンプレックスを持つ少年の目線で作品を書きなおそうと提案し、脚本家はこれに賛同してやり直しに応じた。ロブ・ライナー自身もまた、偉大なコメディアンである父親にコンプレックスを感じていたから、ゴールディーと自らを重ね合わせることができたからだという。

https://www.youtube.com/watch?v=KYpY78_hVi8


こうして脚本を書き直して再出発を遂げたスタンド・バイ・ミーだが、次に資金繰り、さらには配給会社の壁にぶち当たることになる。結局、資金はロブ・ライナーのプロデューサー友達のノーマン・リアがロブと脚本を信じて8億円の投資をしてくれることになったため、なんとか映画を撮り終えることができるようにはなったものの、配給会社がなかなか見つからなかった。大きなネックになったのは、ほぼ無名俳優しか出てないことだ。内容もまた大ヒットが見込めないと思われたのだという。無理もない。スタンド・バイ・ミーが公開された年のアメリカ国内の大ヒット作といえば、トップガン、クロコダイル・ダンディー、プラトーンにエイリアンだ。少年の成長物語というジャンルは配給会社からすると地味すぎたのかもしれない。よってパラマウント、ユニバーサルピクチャーズ、ワーナーブラザーズはおしなべてスタンド・バイ・ミーの配給を却下。このままではお蔵入りの危機、もはやこれまでかというときに、ここに救世主が現れた。コロンビア・ピクチャーズのガイ・ミケルウェインだ。風邪でぐったりしている時に試写リクエストが届いていたスタンド・バイ・ミーを観てみることにしたところ、一緒に見ていた娘達の大熱狂ぶりを見て配給しようと決めたのだという。


そんないばらの道を乗り越えて公開に至ったスタンド・バイ・ミーだが、製作者の予想をはるかに超える大ヒットになった。その人気の広がる様子は公開館数の変遷から読み取ることができる。

1986年のアメリカ国内における大ヒット映画トップ20に入っているほとんどは公開当時から1000館以上のスケールで公開された作品だ。最初から大々的に全国の映画館で上映される作品はそれだけヒットが見込まれている作品ということだ。スタンド・バイ・ミーの初週の上映館数を見てみると、なんと16館にすぎない。だが、作品が公開後に批評家からも観客からも支持を集め続け、最終的にはなんと、848館で公開される大ヒットになったのだ。興行収入も元手の8億を考えると52億円と大成功である。

公開前に監督のロブ・ライナーが抱いていた「誰も好きになってくれなかったらどうしよう」という不安はすぐにかき消え、スタンド・バイ・ミーは世界中で愛される作品となった。


https://muuseo.com/45rpm/items/364


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そして、これからもスタンド・バイ・ミーは語り継がれていくだろう。

2016年にはスタンド・バイ・ミーの公開30周年を記念して「生誕30年おめでとう」とか「いまだ色褪せない永遠のクラシック」というような記事も多く書かれた。

どんな芸術作品においても、何年経っても愛されている作品は希少だし、製作者や原作者からしたら大変に光栄で嬉しいことだろう。

原作者といえば、この作品はかのモダンホラーの大家、スティーブン・キングの作品(原作の題名はThe Body)だ。彼の作品はキャリー、ミザリー、ショーシャンクの空に、などなど、何度も映画化されているのだが、そんな数ある映像化作品の中でキングが一番お気に入りだったのはスタンド・バイ・ミーだと公言している。

この映画をプライベート試写会で見た後、スティーブン・キングはしばらく目を閉じて感情を抑えるかのように小刻みに震えていたのち「トイレで考えをまとめてくる」と言いトイレに行った。何を言われるのかとそわそわしながらロブ・ライナーが待っていると、スティーブンは帰ってきてからこう言ったのだという。

「私の映画を映画化した中で一番この映画が一番好きだ。私が伝えたくても表現できなかったところまで表現してある。」と感激を伝えたのだとか。(ロブ・ライナーのインタビューより)

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12歳の時のような友達には出会えないだろう。みんなそうじゃないか?」

作家として大成したゴールディーが語る。

私が生涯の大親友に出会ったのは20代だったし、もっと遅く知り合う人もいれば、小学生くらいの時に早々と親友に出会った人もいると思う。

ただ、確かに12、3歳とか中学生時代は確かに人として一番多感だった時期のように思う。殻のついてない、傷をつけたらすぐに血が吹き出てしまうほどに生々しくもむき出しの感性の12歳の多感な自分がいて、同じく多感な12歳たちが周りにいる。どうにも多感なもの同士の相互にぶつかり合って、忘れられない出来事が起こりうる。


様々な魅力に飛んだ作品、何度見ても違う発見がある作品、スタンド・バイ・ミー。

またじっくりと鑑賞してみたい。


最後にもう一度、ベン E キングの名曲を聴きながら、映画の名シーンを見て終わりにしよう。

https://www.youtube.com/watch?v=pHa4pvspCqc


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