永遠の名曲Don't Think Twice, It's All Rightとカバー曲集

初版 2018/09/14 09:49

改訂 2022/12/20 13:53

こんにちは、あゆとみです。

https://muuseo.com/moonshine/items/51


Bob Dylan/The Freewheelin' [アナログレコード 2] | みんなのアナログレコードコレクション by Muuseo

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Don't Think Twice, It's All Rightを初めて聴いたのは、映画のワンシーンだった。

故リバー・フェニックス主演の1991年の話題作Dogfight(邦題:恋のドッグファイト)である。

リバー演じるエディー・バードレースとその血気盛んな海兵隊仲間が、ベトナム出兵前の馬鹿騒ぎの一貫で、サンフランシスコの街でとあるゲームをする。

「一番ブスな女を相手に気づかれないようにデートに連れてきた奴が勝ち」という、全世界の女性を敵に回すくらいに失礼で残酷なゲームだ。

意気揚々と街に「ブス」を探しに出かけたエディーが出会ったのがリリー・テイラー演じるヒロインのローズだった。デートに誘われたのが嬉しくて、精一杯のおめかしをして現れるローズだが、やがて、イカサマデートのカラクリに気づいてしまう。

傷つき激怒してエディーに歩み寄り、ビンタを食らわせて啖呵を切るローズ。

その時初めて自分の行為の愚かさに気づかされ、ローズを「ゲームのアイテム」としてではなく、「一人の人間」として認識するエディ。エディはローズに深く詫び、もう一度今度は本気でデートに誘い直す。

https://www.youtube.com/watch?v=b2aQbrQu1IM


Don't Think Twice, It's All Rightは、そんな二人が結ばれてエディがローズに別れを告げる朝に流れる。静かなギターのイントロで一気に引き込まれた。

ローズに別れを告げて、朝日の広がる街に溶け込んでいくエディ。生きて再会できるともわからないベトナム戦争に出兵するエディを静かに見送るローズ。別れの切なさをがじんじん伝わってきた。

これはもう、すぐにでも手に入れなければ!と映画を見終わってすぐにレコード店に走ったものだ。

https://www.youtube.com/watch?v=u-Y3KfJs6T0


Don't Think Twice, It's All Rightが収録されているFreewheelin'のアルバムジャケットも大好きだった。

もともとどんなアルバムジャケットでも関係ないくらい惚れ込んで買い求めた曲だったのだが、収録されているのがこんなに素敵なレコードジャケットだと二倍嬉しい。

写真にはボブ・ディランと一人の美女が写っている。ニューヨークの街を仲睦まじく寄り添って歩く二人。彼女はボブ・ディランのかつての恋人スーズ・ロトロだ。

スーズは18歳、ディランは20歳。お互いにとって初めての大恋愛の相手であり、深い影響を与え合う関係だった。

スーズが後年に書いた自叙伝"A Freewheelin' Time"によると、彼女は生粋の左翼の一家に育ち、市民運動に積極的に参加するなど、政治的意識のとても高い女性だった。ボブ・ディランが政治的な歌詞を書くようになったのも彼女と出会ってからだという。

Don't Think Twice It's All Rightは、ディランがそんなスーズに別れを告げる曲だ。大恋愛に別れを告げる曲だけあって曲調はとても切ない。一方、歌詞はかなりビターだ。綺麗事ではない。悲しさ、怒り、悔しさなど、整理できない感情を覗かせている。

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まとめると題名のままに「後悔してもしゃあない。いいってことよ。」となるのだが、最後の捨てセリフが「きみはおいらの貴重な時間を無駄にしたってことさ」だったりと、かなりトゲトゲしい。ただ、行間から滲み出てくるのは、未練たっぷりでどこか強がっているディランの姿だ。本心とは裏腹の強がりが感じられるからこそ、なおのこと曲の切なさがますのだろう。

相手への気持ちが強ければ強いほど、別れは難しいものだ。未練も整理しきれない苦い感情もまた当然のことだろう。

別れの真実を捉えた曲だと思う。


1962年のリリース以降、世界中の人々の心を掴んできたDon't Think Twice It's All Rightはまた様々なアーティストにカバーされてきた。

ここからはそんな多数存在するカバー曲の中で私的に好きだった曲をいくつか紹介してみたいと思う。どの曲も原曲のエッセンスを保ちながらも、原曲とはまた違う「別れのドラマ」を伝えてくれるカバー曲たちだ。

伝え手が違うとここまで雰囲気が変わるのかと驚かされる。


その1 ダメンズに見切りをつけた肝っ玉母さんバージョン

お袋さんのような外見と太い声のOdettaのカバーを聴いて浮かんでくるのは、長年母のような包容力で愛してきたどうしようもなくダメな男についに愛想をつかして別れを告げる女性の姿だ。

https://www.youtube.com/watch?v=K5TRwv9aOTc


その2 別れの対象は恋人ではなく青春そのもの。青春群像劇バージョン

男女混合バンドThe Seekersによるカバー曲は青春映画にぴったりだ。ともに歩み、ともに笑って、ともに泣いた過ぎ去る青春を歌おう、という感じ。

https://www.youtube.com/watch?v=MBcw4g6aA9U


そうなっちゃったものは仕方ないじゃないの。大人の恋の終わりバージョン


原曲からは初々しい恋と、大好きだった恋人への未練が強く漂うが、次に紹介する二曲はもっと年上(30代から上のイメージ)の恋愛模様だ。生きてればもっと辛いこともあるんだから、終わりを受け入れてさあ前に進みましょう〜とでもいうとてもポジティブかつ、端々に人生の悲劇を喜劇としてとらえるユーモアすら感じさせる。


まずはソウル界の巨匠と呼ばれるBilly Paul1973年にリリースしたカバーバージョン。自由奔放に原曲のメロディをすっ飛ばしていくのだが、デタラメじゃなくてちゃんと落ち着くべきところには落ちて、上手い!と唸らされる。歌い手のおおらかな個性を感じさせる。

https://www.youtube.com/watch?v=qxDVXOa1Gm8

https://muuseo.com/56688588/items/140


こちらも名作アルバムと名高い↓

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Billy Paul / 360 Degrees of Billy Paul [1972年発売のアルバム] | みんなのアナログレコードコレクション by Muuseo

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k-69


1970年にリリースされたR&BシンガーBrook Bentonのカバーバージョンもまた伸びやかで、悲しいことも笑顔で乗り越えていく懐の深さを感じさせる。時折入るびっくりするほどの低音がアクセントになっていて面白い。

https://www.youtube.com/watch?v=GCm0aUvSyr0


このアルバムの5曲めに収録↓

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How Many Roads: Black America Sings Bob Dylan [2010年発売のアルバム] | みんなのアナログレコードコレクション by Muuseo

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ちょいワルオヤジ流、別れの告げ方バージョン

1966年のBob Doroughのバージョンは、オールタイムジャズ風のアレンジで、とびっきり軽快なジャズピアノが印象的だ。

https://muuseo.com/negrita/items/486


https://www.youtube.com/watch?v=ugZrxoSXuaY


こんなトーンのこんな口調で別れを切り出されるとたとえ未練があったにしても、なんとなく納得してしまいそうな説得力を感じる。後腐れない別れのドラマが見える。

Just About Everything / Bob Dorough [The 1970s] | みんなのアナログレコードコレクション by Muuseo

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声は華奢でも芯は強い。オルタナ・ガールズバージョン

2012年にLauren O'Connellという女性がYoutubeでリリースしたカバーバージョンもいい。

アコースティックギター1本のスローテンポなバージョンは、文学少女のつぶやきという雰囲気で、叙情的な語りが魅力的だ。勝手なイメージだが、ボブ・ディランと気が合いそうな感じがする人だ。どことなく元カノのスーズ・ロトロにも雰囲気が似ている。ニューヨーカーということで身にまとっている環境の空気感が似ているのかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=OqZO7JvRdmU


2012年のベルギー映画The Broken Circle Breakdown(邦題:オーバー・ザ・ブルー・スカイ)の劇中結成バンド、

The Broken Circle Breakdown Bluegrass Bandがリリースしたバージョンもブルーグラスバンドということでジャンルは違うのだが、オルタナ・ガール風の語り口だ。見た目からは想像もつかないくらい華奢な高音の女性ボーカルの声で、切なく、叙情的。バンジョーの音色も気持ちがいい。

世界的なセンセーションを巻き起こした映画ということで、このカバー曲がどこで流れるかをチェックしがてら是非みてみたい映画である。

https://www.youtube.com/watch?v=lywlryUqrsQ


フィドルと鉄琴の調べ。ケルティック・バージョン

1971年にスコットランド出身のケルティックバンドJSD Bandがリリースしたバージョンもまた違う味付けでいい感じだ。フィドルと鉄琴の織りなす音が心地いい。

https://www.youtube.com/watch?v=jHN4O_bKjWs


異色のアーティストによるポルトガル語バージョン

ブラジルアーティストZe Ramalho(ゼ・ハマーリョ)のバージョンも面白い。まず声がいい。砂が声帯に入り込んだような、ザラザラしたベースの声が渋みたっぷりで、クセになる感じだ。なんでもブラジル北東部音楽の代表的存在で、吟遊詩人ロッカーとして有名らしい。曲調は明るく、後腐れのない別れの情景が浮かんで来る。新たな才能にめぐりあわせてくれるのもまたカバー曲の醍醐味だろう。調べるとブラジルでは有名なアーティストらしい。是非もっと聴いてみたいアーティストになった。

https://www.youtube.com/watch?v=WVmAaOQBu7o


以上、様々なカバー曲を紹介してきたが、やはり原曲は最強だ。


ずっと浸っていたくなる魅力的なギターのイントロ、ボブ・ディランの特徴的なしゃがれ声が静かに語る1つの愛の終焉、ハーモニカの音色、圧倒的な叙情性。

いつの時代になっても通じる歌詞の内容も含め、何年経っても古くなることがない、永遠のクラシックだと思う。

https://www.youtube.com/watch?v=TuJfEMO_wXs


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#くよくよするなよ

#ボブ・ディラン

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