MUGEN/サニーデイ・サービス

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1999年リリース、サニーデイ・サービス6枚目のアルバム。
前作「24時」がサニーデイの枠自体を広げようとなりふり構わずあがき続けた作品だとしたら、
今作はサニーデイが最も得意とすることをひたすらブラッシュアップする事に心血を注いだ作品だと言えるんじゃないでしょうか。

全10曲、ポップスの結晶のような美しく端正なレコード、それも確かに事実だと思うのですが同時にこんなに歪な作品もないなと感じてしまうのです。

中期スライのサウンド・テクスチャーを引用して洗練された極上のポップスを奏でるというコンセプトは、最上の果実を生み出したという事実を考慮してもかなり変だし、
結果的にポップスとして万人に開かれていながら、同時に非常に密室的で閉じたムードを湛えた不思議な音楽になった。

レイドバックしたバンドサウンドの隣で鳴り続けるリズムボックス。クラブカルチャー、ディスコへのアンバランスな近接。何度も歌詞での言及があるにも関わらずそのサウンドにクラブミュージックの匂いはほぼ皆無だ。なにせタイトルはあの『MUGEN』なのだが。

ここにスライがバンドの崩壊と共に『暴動』のサウンドを選び取らざるを得なかった苦味と似たものを感じてしまうのは、
後のインタビューで当時のメンバーの苦悩を知ってしまった故の穿った見方でしょうか。

これまた全曲素晴らしいのだけど、9曲目『真夜中のころ・ふたりの恋』のあまりにも美しいシティ・サウンド。こんなデッドエンド感の中にあってなお、最後にこんなにも鮮やかな新境地を見せてくる事に凄みを感じる。そして90年代のサニーデイ・サービスは最後のパーティへ向かう。

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