鑑定会社の初日発行認定について

初版 2024/06/23 23:44

改訂 2024/06/23 23:47

コインの鑑定が注目されて以来、市場には写真のようなスラブに入ったコインを度々目にするかと思います。

その中で、〜 RELEASES(STRIKE)と銘打たれたラベルをご覧になったことはありますでしょうか。

これは、コインの発行後早いうちに鑑定に付されたコインに認定されるもので、通常はスラブのラベルに記載されます。そのため、専らモダンコイン、それも「たった今」発行されるコインで取り上げられるものです。

今回は、そんな初日発行認定にスポットライトを当て、意義と付き合い方について取り上げてみたいと思います。

主な初日発行の認定は以下の通りです。なお、発行・購入の証拠となるものを要求されることがあるなど、細かい条件がありますが、詳しくは割愛します。

NGC FIRST DAY OF ISSUE

→ 発行後1日以内にコインを購入し、1週間以内にNGCのオフィスに提出

NGC FIRST RELEASES®️

NGC EARLY RELEASES®️

→ FIRST は発行後30日以内、EARLY は発行後6か月以内にコインを提出

PCGS FIRST DAY OF ISSUE

→ 発行日の翌営業日午前10時までにコインをPCGSのオフィスに提出

PCGS FIRST STRIKE®️

→ 発行後30日以内にコインをPCGSのオフィスに提出

なぜこのような認定があるのかというと、初期製造(初期打ち)のコインはコインの図柄を刻む極印が良好な状態で打たれているため、図柄がより鮮明に現れる傾向があるからです。また、早期にスラブに封入されたコインは、環境要因による変化を受けている可能性が低いことから、状態も良好な傾向にあるという理由も考えられます。

上記の理由から、初日発行の認定が付いたスラブに封入されたコインは、市場において価格に少々影響があることがあります。

…ここまで書くと、積極的に狙ってみようとならないでもないですが、いくつか注意点を。

その1 初日発行認定は追加料金がかかる

→ コインを直接鑑定依頼するか代行業者を利用するかによって金額も変わってきますが、いずれにしても、初日発行認定には、通常の鑑定手数料に加えて認定の料金がかかります。

その2 物理的に取れない認定もある

→ これは、FIRST DAY OF ISSUE がそれに当たります。ざっくり言えば発行日の翌日には鑑定会社のオフィスにコインを持っていかなければならないからです。この認定を取れるのは、鑑定会社のオフィスがある地域の地元のコインくらいでしょう(稀に造幣局とのコラボで取れることがあるようです)。ちなみに、私の経験でいえば、欧州のユーロ銀貨を現地の方に購入して頂き、発行後1〜2週間で自宅に届いたコインが、NGC FIRST RELEASES®️を取得した事例が数例あります。

その3 ラベルは違えど同じコイン

→ タイトルを見て、当然だという感想をお持ちかと思います。その通りです。ですが、私が最もお伝えしたいことでもあります。ラベルが違う(初日認定の有無)からといって、コインが変わるわけではないということです。逆にいえば、同程度の状態であれば所詮はラベルか違っても中身は同じであるということです。

その4 価格への影響は大差ない

→ その3でお伝えした通り、同種コインならばラベルが違っても中身は同じということからくるものです。そのため、初日発行認定の有無で価格が大きく変わるわけではありません。私が見たとある銀貨では、同じ70の最高鑑定品に対し、FIRST RELEASES ありは19,500円、初日発行認定の類なしは15,000円の売値が付いていました。これを大きな差とみるか小さな差とみるかは、評価概念ですから人それぞれでしょう。大切なのは、大差があるわけではないということです。収集価値が極めて高い大型金貨や非常に人気のあるコインであれば無視できない金額の差が出るかもしれませんが、1桁万円以下のコインでは本当に大差が出ません。コインを買取に出す際には、初日発行認定などほとんど評価されないといって良いかと思います。ただし、どうしても欲しいコインをできるだけ安く買いたいと考えるならば、この初日発行認定のないコインを狙ってみるのも良いでしょう。また、逆に少しでも違いを楽しむため、あえて初日発行認定を狙ってみるのも一興かと思います。

その5 初日発行認定ラベルは通常ラベル扱い

→ これは、注意点というより、狙って認定を取る方にとってはメリットにもなります。NGCで鑑定を受ける場合に問題になることです。NGCは、通常ラベルとは別に、各国の柄や著名人のサイン(シグネチャー)が印刷されたスペシャルラベルが提供しています。鑑定を代行業者に依頼する場合、スペシャルラベルの利用に独自の条件を設定している業者もあります。しかし、NGC の初日発行認定用ラベルは通常ラベル扱いのため、上記のような条件を出している業者であっても1点から申し込むことができます。リホルダーサービスを利用する際に新しいスラブに初日発行認定が引き継がれるかどうかについては、調べておりません。

その6 どんなコインでも初日発行認定を取ることができるわけではない

→ 悲しいことに、初日発行認定は取ることができるコインとそうでないコインとがあります。NGC の場合、対象となるコインと認定の提出締切日をHPで公開しています。オフィスがある国や地域のコインはこの認定を受けやすいです。特に一般通用コインの場合、認定の条件を満たす同種コインを(もちろん、認定の証拠となる書類などを提出したうえで)最低でも10枚は提出しないと認定を取ることができません。この条件を満たした例に、日本の500円バイカラー・クラッド貨(令和3年銘)があり、私も1枚保有しています。ただし、これは例外的な場合であり、鑑定会社のオフィスがない日本のコインは、発行日と購入日の証拠つきで一度に大量提出しない限り、初日発行認定を取ることはできません。

思いつきで書いたために長文になってしまいましたが、いかがでしょうか。初日発行認定の賛否に関しては各者各様の意見があろうかと思いますが、スラブコインを導入するとき、上手に付き合っていきましょう。

日本貨幣(近世以降)とユーロ貨幣を中心に収集しております。どうぞよろしくお願いします。

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