ZickZackとその周辺、1枚のコンピから広がるNDW!

初版 2024/04/13 16:00

改訂 2024/04/15 09:07

多分、NDWに興味がある方は、今まで、何故ZickZack (ツィックツァック)を取り上げないのだ!とお怒りもあると思いますので、ここら辺で、一度、このNDWの代表的なレーベルであるZickZackを取り上げて、そこから、どんなバンドが出ていたのかを具体的に書いていきます。

V.A. "Lieber Zuviel Aus Zuwenig"

ZickZackは、英国音楽誌SoundsのライターであったAlfred Hilsberg (アルフレート・ヒルスベルク)がハンブルクで立ち上げたNDWのレーベルであり、そこからは、メジャー級の活躍をすることになるEinstrützende Neubauten, Die Krupps, Palais Schaumburg (パレ・シャンゥブルク)やAndreas Dorau (アンドレアス・ドーラウ)から無名ながら独自の面白い音楽をやっているグループ/アーティストまでを扱っており、当時から注目のレーベルでした。1994年頃には、財政難から、What's So Funny Aboutと言うレーベルに統合されたりしていますが、2000年以降は再び独立したレーベルになっています。それで、まあ、メジャー級のグループやアーティストは別項目で書くとして、私が独自に選んだグループ/アーティストについて書いていきます。私は、最初、よく分からない音楽を聴こうとする時に、先ずはコンピレーション・アルバムを買って、確かめてから、個々のグループとかのアルバムを購入するのが癖だったので、NDWに関しても、コンピレーション・アルバムから入りました。その中に V.A. "Lieber Zuviel Aus Zuwenig (リーバー・ツフィール・アウス・ツーヴェニク)"がありました。そして、サブタイトルには「ZickZack 1981年代夏のヒット曲集」とも記されており、何やら騙すつもりかよとも感じました。収録アーティストには、Front(A1), Kosmonauntentraum(A2), Aus Lauter Liebe(A3), Falsche Fahnen (A4), Die Tödliche Doris(A5), Abwärts(A6), Andy Giolbino(A7), Saal 2(A8), Nachdenkliche Wehrphlichtige(A9), Palais Schaumburg(B1), Einstrützende Neubauten(B2), Andreas Dorau(B3), Die Zimmermänner(B4), Freiwillige Selbstkontrolle(B5), Viellichtors(B6), Wirtschaftswunder(B7),  X-Mal Deutschland(B9), Die Radierer(B10)が収録されていました。後で知ったのですが、Xao Seffcheque (クサオ・ゼフチェーク)による7inchSingle付きの特別盤もあったようです。ここでは、1曲ずつ紹介はしませんが、ここで聴いた音楽はかなり刺激的であったと思います。それで、メジャーどころ以外のグループで気になったグループについて書いていこうと思います。


Kosmonautentraum 1st album "Juri Gagarin"より"Kosmonaut"

先ずは、Kosmonauntentraum (コスモナウンテントラウム ;「宇宙飛行士の夢」の意)です。後に、名盤と言われますが、ソ連の宇宙飛行士Juri Gagarinがジャケ写にバーンと載っていて、ここら辺にも対米の意識を感じます(DAFのセカンドのジャケとの共通がありますね)。メンバーは、Ziggy XY (Vo, Synth, Melodica; 本名Michael Jarick;ミカエル・ヤリック), E.K.T. (Drs, Synth, Mellotron, G, Vo, Effects, Perc; 本名Eckart Kurtz; エッカルト・クルツ), Süsskind (B, Synth, Pedalboard, Klavier, Trumpet, Melodica, Xylophone, Perc; 本名Erhard Schüttpelz;ズュスキント[エァハート・シュットペルツ]), Kai May (G, Harp, E-Piano, Sounds, Perc; カイ・マイ)の4人組で、何とも歪で硬質な生のリズム隊に合わせて、シンセが曲を引っ張っていくスタイルで、勿論、独逸語の歌詞でカクカク/シュシュと歌っています(勿論、歌詞はある。独逸語の語感がこんな感じです)。個人的には、このサウンドこそが如何にもNDWを象徴していると感じました。セカンド・アルバム"Tagediebe (ターゲディーべ)"では、E.K.T.が抜けており、代わりに、Jorg Einicke (Drs; ヨルク・アイニッケ)が加入していますが、音はスカスカになっています。

Kosmonauntentraum "Tagefiebe"

その後は、1985年にZickZackからの最後のリリースとなるミニ・アルバム"Angst Ist Mein König (アングスト・イシュト・マイン・ケーニッヒ)"を出しますが、メンバーは、Ziggy XYとHopek Quirin, Jochen Arbeit (後にE. Neubautenに加入)となっています。ファーストの出来は本当に素晴らしいもので、購入当時はヘビロテしていましたが、サード・アルバム前に聴くのをやめています。理由は思い出せません。

Der Moderne Man 1st Album "80 Tage Aus See"

なお、E.K.T.は、1979年結成のパンクバンドDer Moderne Man (デァ・モダーネ・マン)と平行して活動しており、1980作のファースト・アルバムには、Ziggy XYも参加していますが、Ziggy XYは、その1枚だけ参加して脱退しており、E.K.T.がそのまま、Der Moderne Manの中心となって活動していました。Der Moderne Manは、ライブ盤も合わせて、5枚のアルバムを出して、1984年に解散しています。

次に気になったのは、Saal 2 (ザール・ツヴァイ)です。実は、Saal 2の1994年作のファースト・アルバム"Aus Der Suche Nach Dem Gluck (アウス・デァ・ズッフェ・ナッホ・デム・グルック)"はまだ持っていないのですが、先述のコンピレーションに収録された曲"Strandgefühle (ストランドゲフューレ)"が一発で気に入りました。

Saal 2 1st album "Aus Der Suche Nach Dem Gluck"

当時のメンバーは、Jens Kraft (G, B, Synth, Vo, Rhythm Section; イェンス・クラフト), Godeke Ilse(Organ, Bass-Synth, Synth, Vo, Rhythm Section;ゴデッケ・イルゼ)のデュオなんですが、最初期にはThomas Meins (Perc)もいたとのこと。担当楽器でも分かるように、リズムマシンとシーケンサーを使った最小限編成で、また演奏も今で言うシンセウェーブ的な曲です。それで、後に、再発専門レーベルVinyl-On-Demandが2005年にリリースした"Weil Das System Nicht Funktioniet(ヴァイル・ダス・ジステム・ニヒト・フンクチォニート)"で、その全貌を知りました。

Saal 2 Single "Angst Vorm Tanzen"

後、このグループと面白いのは、リリースが増えたり、メンバーが増えると、Saal 3になったり、Saal 4になったりするところですね。因みに前後しますが、Saal 2は、最初はZickZackからシングルを出していたのですが、彼等のファースト・アルバムは、Saal 3やSaal 4時代の曲も含めた内容だそうです。しかし、現在は、Saal 2で統一されています。

Saal 2 album "Was Macht Die Musik?"

それで、2015年には、JensとFolke Jensen(フォルケ・イェンゼン)のデュオとなって独レーベルTapete RecordsよりSaal 3やSaal 4時代の曲も含めたSaal 2としての新録アルバム"Was Macht Die Musik? (ヴァス・マハト・ディー・ムジーク?)"がリリースされています。 

次は、ハンブルクのポストパンクバンドAbwärts (アブヴェルツ)について書いていきます。何たって、このバンドには、後にEinstrützende Neubautenに加入し、音楽的頭脳の一端を担っていたF.M. EinheitとMarc Chungが在籍していたのですから。それで無くとも、硬派なポストパンクバンドとして、彼等が抜けた後も、現在まで活動を続けている息の長いバンドなんです。まぁ、それは置いておいて、私が聴いていたのは、ファースト・アルバム"Amok Koma"(1980年作)とセカンド・アルバム"Der Westen Ist Einsam (デァ・ヴェステン・イシュト・アインザム)"(1982年作)だけなんですけどね。前者はZickZackからのリリースですが、後者は大手Mercury Rercordsからのリリースです。その頃のメンバーは、Frank Z (G, Vo), F.M. Einheit (Synth, Effects, Vo), Marc Chung (B), Margitta Haberland (Vln, Vo; マルギッタ・ハバーラント), Alex Dill (Drs)ですが、セカンドアルバムでは、Margitta Haberlandは脱退しています。何となくなんですが、ファーストアルバムの頃は、Einheitはちゃんと楽器を演奏しておらず、何か訳分からん音(ノイズ)を出していたように思います


Abwärts 1st albumより"Japan (live)"

Abwärts 2nd album "Der Western Ist Einsam"

Abwärts 2nd albumより"Beim Erstenmal Tut's Immer Weh"

セカンドアルバムの方が、洗練されて聴き易くはなっていますが、骨太なリズム隊とフリーキーなギターやシンセ等の効果音的使用は相変わらずで、聴き応えがあります。まぁ、その後のAbwärtsは実際、聴いていないので、どんな感じになったかは不明ですが、最近も活動しているようでした。2024年1月にバンドの中心的人物Frank ZことFrank Ziegertが他界してしまいましたが、Abwärtsはライブを続けていくようです。

この次は、Andy Giorbino(アンディ・ギョルビーノ)について書きます。このマルチ奏者のファーストアルバム"Lied An Die Freude (リード・アン・ディー・フロイデ)"(1981年作)とセカンドアルバム"Anmut Und Würde (アンムート・ウント・ヴュルデ)"(1983年作)は、ZickZackから出ていますが、実はその間にカセット作品"Frechheit Siege ! (Welt Der Kinder)[フレッフハイト・ジーゲ!(ヴェルト・デァ・キンダー)]"もZickZackからでており、内容的にはかなり良い感じのカセット・カルチャー向け作品です(いつか入手したい)。


Andy Giorbino カセット作品より"Modernes Japan"

それと、ファーストアルバムの内容でのオランダでのマルチメディア的パフォーマンスのライブ音源もRipOffからカセット作品"Lied An Die Freude 'Live Performance In Amsterdam'"として出ています。彼の作風は、所謂、宅録系シンセウェーブな感じなのですが、この時期のNDW系アーティストに有り勝ちな早いテンポでチープなリズムボックスとシーケンサーを走らせるのも特徴でしょう。しかしながら、彼は、元々はギタリストなので、色んなバンドにゲスト参加しています。それから、ちょっと調べていたら、2024年1月10日に亡くなっていることに気付きました。ビックリです!

Andy Giorbino 1st albumより"Luft Im Koph"

Andy Giorbino 2nd album "Anmut Und Würde"

その後、1989年にサードアルバム"The Art Of Letting Go"を出していますが、打ち込みの機材は真新しくなって進化しており、初期の頃の雰囲気と随分変わってしまった印象です。それから、Andyは、1983年頃から、ニューウェーブバンドGeisterfahrer (ガイスターファーラー)に加入しています。このバンドGeisterfahrerは、1979年にハンブルクで結成されており、その時のメンバーは、Michael  Ruff (Vo, G; ミカエル・ルフ), Hans Keller (G, Vo; ハンス・ケラー), Matthias Schuster (Synth, G, Vo; マチアス・シュスター), Jürgen Weiß (Drs; ユルゲン・ヴァイス)で、Holger Hiller (Vln)で参加していたりしましたが、彼等の4枚目のアルバム"Fi$ch Gott"でAndy Giorbino (G)は正式なメンバーとなっています。因みに、このアルバムはWhat's So Funny Aboutから出ています。

Geisterfahrer 4th album "Fi$ch Gott"

次は、大人気のThe Wirtschaftswunder (ザ・ヴィルトシャフツヴンダー)について書きます。メンバーは、Angelo Galizia (Vo; イタリア人), Tom Dokoupil (G; チェコスロヴァキア人), Mark Pfurtschneller (Kbd; カナダ人), Jürgen Beuth (Drs; 独逸人)です。特に、Tom Dokoupil (トム・ドクピル)の活動が目覚ましく、また「ヘンテコ」の天才です。


The Wirtschaftswunder "Der Kommissar"

その前に、The Wirtschaftswunderは、1980年にZickZackから出したシングルで、1960年代のTV犯罪ドラマのテーマソングをベースにした曲"Der Kommissar(デァ・コミッサー)"がヒットし、その勢いで、1981年にファースト・アルバム"Salmobray (ザルモブレイ)"をZickZackから出しています。そのA1のタイトルが"Analphabet"と言う何とも可笑しいと言うか馬鹿馬鹿しいもので、実際、そう言う歌詞を強いイタリア訛りの独逸語で朗々と歌っているのも凄いです。もうここら辺にくると、Der Planの諧謔性とかでもなく、ギャグに近い無意味さですよね。

The Wirtschaftswunder "Salmobray"より"Analphanet"

その後、彼等は、1982年にメジャーレーベルPolydorと契約して、アルバム"The Wirtschaftswunder"を出しますが、歌詞の無意味さは仕方ないとして、バックの演奏力は凄まじく、硬質でバキバキした音が複雑に絡んでいます。

 The Wirtschaftswunder album "s/t"

同年には、モノクロ映画のサントラとしてアルバム"Tscherwonez (ツェルヴォーニッツ)を出していますが、音だけ聴くとふざけているようでいて「上手い」ですね。そうして、4枚目のアルバム"Pop Adenauer (ポップ・アデナウアー)"を1984年に出して、バンドは解散してしまいます。それで、The Wirtschaftswunderとは別に、Tom Dokoupilが関わったバンドとして、先ず、当時の首都ボンとフランクフルトの中間にある街Limburg an der Lahnで結成されたDie Radierer(ディー・ラディーラー)が挙げられます。メンバーは、The WirtschaftswunderのメンバーでもあるJürgen Beuth (G, Drs; ユルゲン・ボイト), Christian B. Bodenstein (Vo; クリスチアン・B・ボーデンシュタイン), Peter Lack (Drs)で、そこに、Tom Dokoupil (Kbd, Sax, Synth, B)が加わって制作されたのが、1981年作のシングル"Angriff Auf's Schlaraffenland (アングリフ・アウフズ・シュララーフェンラント)"とアルバム"Eisbären & Zitronen(アイスベーレン&ツィトローネン)"で、どちらもZickZackからリリースされています。このシングルは、かなりシンセによる電子音が使われており、ある意味、非常にNDW的です。


Die Radierer 1st album "Eisbären & Zitronen"より"Eisbär-Disco (Erster Mix)"

その後、Pete Lackが抜けて、残りのメンバーで制作されたのが、セカンドアルバム"In Holywood"で、この後に、1984年にZickZackから出たサードアルバム"Gott Und Die Welt"は、世界地図を模した美しいピクチャーレコードでしたが、これ以降活動停止状態となります。

Radierer 4th album "Der Andalusische Bär"

バンドは、2008年に新録アルバム"Der Andalusische Bär (デァ・アンダルジッシェ・ベェル)"て復活していますが、このアルバムにはTom Dokoupilはもう参加していません。もう一つの、Tom Dokoupil関係として、彼のソロ・ユニットSiluetes 61(ジルエーテズ61)があります。この名義で、彼は2枚のアルバムと2枚ののシングルを出していますが、その内、セルフタイトルのファースト・アルバムとファースト・シングル(ソノシート)"Wo Ist Der Dom?"はZickZackから出しています。

Siluetes 61 1st album "s/t"

Siluetes 61 2nd album "Ich Hasse Jeden Der Mich Nicht Mag"より"Sex"


こちらも、おふざけが過ぎる無意味な笑いの天才音楽を電子音に乗せてやっています。正に「Dokoupil節」炸裂です。言葉が分かると彼の凄さも理解し易いと思いますが、Tom Dokoupilは、1980年代のNDWの中ではキーパーソンですね。それから、The Wirtschaftswunder解散後、残りのDokoupil以外の3人のメンバーは、Dierk Hill (G)と共にChin-Chat(チン・チャット)と言うバンドを組んで、1985年にアルバム"Introducing"をリリースしていますが、所謂エレ・ポップな内容になっています。


Chin-Chat 1st album "Introducing"より"Nippon Gakki"

その次は、最近、多数の音源が発掘されたNDWの男女デュオTi-Tho (ティ・トー)を取り上げますね。このデュオ名の由来は、メンバーであるChristina Marisa CalcagnoのChris"TI"naの'TI'とThomas Stelterの"THO"masの'THO'を合わせたもので、そのユニットの凄い所は、当時13歳だったChristinaが10歳年上のギター教師Thomasとデュオを組んだこと自体で、デビュー・シングル"Traumtänzer(夢見るダンサー)"は、1982年にZickZackからリリースされています。


Ti-Tho 1st single "Traumtänzer"

その後はメジャーレーベルと契約して、7年間の活動期に4枚のシングルを出していますが、単独新録アルバムは出していません。音の方は、Christinaのロリコン・キャラを活かして、バックはシンセやシーケンサーやドラムマシンで固めた、所謂、典型的シンセウェーブな音です。特に、ヴォーカルは思春期のコケティッシュな歌い方が満載で、このユニットの素晴らしさの一つとなっています。このデュオが広く知られることになったのは、独逸の再発専門レーベルVinyl-On-Demandが、シングル曲や未発表曲、デモ曲等を集めたセルフ・コンピレーション・アルバム"Freuziel (フロイツィール)"を2015年に出したことに端を発し、日本のSuezan Studioも、更に未発表曲等をコンパイルして、2022年に2枚組CDとして新たに出しています。

Ti-Tho album "Freizeit" (Vinyl-on-Demand盤)

ただ、Thomasは2010年に亡くなっていますが、相方のChristina Marisa Calcagnoは、MarisRPやLovezilla等のバンドを率いて、今も現役で活動しています。

まだまだ紹介したいバンドもありますが、取り敢えず、有名どころとして、Die Zimmermänner (ディー・ツィマーメナー;「大工」と言う意味)を紹介します。個人的には、良く名前は聞くのですが、アルバムとかを聴き込んだことはあまり無いと記憶しています。それで、メンバーは、Detref Diederichsen (Vo, G, Kbd; デトレフ・ディードリッヒゼン), Timo Blunck (Vo, G, B; ティモ・プルンク), Christian Kellersmann (Sax; クリスチャン・ケラーズマン), Hans-Jürgen Piel (B; ハンス・ユルゲン・ピール), Hansi Bley (Drs, Perc; ハンジ・ブレイ)で、元々は、大学生時代にDiederichsenと、その後にPalais Schaumburgのメンバーと成るTimo Blunckが、1979年にハンブルクで、Blunckの妹のRica Blunckをヴォーカルにして、Kellermann (Sax)も誘って、Ede & Die Zimmermännerと名乗って活動していたのが始まりで、それ以前は、Hans-Jürgen PielとJohann Michael Bleyと共にSaal 3とも名乗っていたらしいですが、そこの所の詳細は不明です。

Ede & Die Zimmermännerのsingle

Ede & Die Zimmermänner名義では、メンバー全員の苗字をZimmermannとしたセルフタイトルのシングルを1980年にZickZackから出しています。

Die Zimmermänner 1st albumより"Wo Bleibt Da Die Lebensqualität?"

その後、苗字を元に戻して、1982年に、Die Zimmermännerとして、ZickZackからファースト・アルバム"1001 Wege Sex Zu Machen Ohne Daran Spaß Zu Haben (1001ヴェーゲ・ゼクス・ツゥ・マッヒェン・オーネ・ダーラン・スパッシュ・ツゥ・ハーベン)"をリリースしています。このバンドでは、早くからレゲエやスカの要素を取り入れたシャレ乙系ニューウェーブなポップな曲が多く、1984年には、ATA TAKから、セカンド・アルバム"Goethe (ゲーテ)"をリリースしています。このアルバムでは、ブラス等を多用したラテン風、カリプソ、AOR等の耳当たりの良いポップスを詰め込んでいます。このセカンドアルバムを出した後、バンドは活動休止をし、2007年に突然復活します。


Detref Diederichsen solo-albumより、"Knastbrüder Erinnern Sich"

そして、Die Zimmermännerのファースト・アルバムがリリースされた1982年に、Detref Diederichsenは、Palais SchaumburgのThomas Fehlmann(トーマス・フェールマン)のプロデュースで、Tim & Rica Blunck,  Herbert Böhme, Hansi Bleyの協力もあって、ソロアルバム"Volkskunst Aus Dem Knabengebirge (フォルクスクンスト・アウス・デム・クナーベンゲビルゲ)"をPhonogramとその傘下のKonkurrenz Schallplattenから出しており、少年の心を歌うようなちょっと気恥ずかしい雰囲気のポップソング集となっています。

では、最後に、UKにも進出し、大物になったX-Mal Deutschland (エクス-マル・ドイッチュラント)について書いておきます。X-Mal Deutschlandは、1980年にハンブルクのパンク仲間から結成されており、当初は全員女性のバンドで、メンバーは、Anja Huwe (Vo; アーニャ・フーヴェ), Manuela Rickers (G; マニュエラ・リッカーズ), Fiona Sangster (Kbd; フィオナ・ザングスター), Rita Simon (B), Caro May (Drs)で、結成1年後には、デビューシングル"Schwarze Welt(シュヴァルツェ・ヴェルト)"をZickZackからリリースしています。

1981年に、レーベルのコンピレーション・アルバムに参加していますが、この頃に、Rita SimonからWolfgang Ellerbrock (B)に交代し、セカンド・シングル"Incubus Succubus"を同レーベルより出しています。


X-Mal Deutschland 2nd single "Incubus Succubus"

同時期に、Caro MayがManuela Zwingmann (Drs)に交代し、多分、皆さんが思われる男女混合バンドになっています。この辺りから、ゴスの要素が入ってきて、Cocteau Twinsの独逸ツアーのサポートを行い、それで、UKレーベル4ADからのファースト・アルバム "Fetisch"(1983年作)のリリースに繋がっていきます。

X-Mal Deutschland 1st album "Fetisch"

その1年後、Manuela ZwingmannがPeter Bellendir (Drs)と交代し、このラインナップが最も長く続きます。1984年にアルバム"Tocsin"をリリースし、1985年にはワールドツアーを敢行しています。そして、1985年には、The StranglersのHugh Cornwellのプロデュースで、アルバム"Matador"をリリースしています。

まだまだ、紹介したいグループやアーティストはありますが、これで本当に最後にします。まぁ偶々、レコードを個人的に持っていたからなのですが、Kleutzer(クロイツァー)について書きます。このデュオは、Murad Mohamed Saleh (Vo, Sax; ムラート・モハメド・ゼレー)とWolfgang A. Kreuzer (G, Vo, Kbd; ヴォルフガング・A・クロイツァー)から成り、唯一の12inchシングル"Lieblingsfarbe (リーブリンクスファルべ)"を1982年にZickZackから出しています。


Kreutzer 12inch Singleより"II Sogno"

その後は、デュオは消滅し、各々が音楽活動をやっているようですが、やがてリリースも無くなっていきます。音楽的には、所謂、宅録系NDWで、ミニマル・テクノっぽい感じですが、この音楽性はプロデュースをThe Flying LizardsのDavid Cunninghamが行っているからでしようか?

まだまだ書きたいことはありますが、一旦ここら辺までにしておきます。ZickZackに関わりのある人物で、Xao Seffcheque (クサオ・ゼフチェーク)もいますが、それはまた、別の項で書いてみます。

Author
File

Dr K2

ノイズ歴約40年のDr.K2が今まで聴いてきた音楽(主に地下音楽)を出来るだけアナログ縛りで紹介していきます。ご興味のある方はどうぞご自由に観て聴いていって下さい。アングラのコンサルジュ。

twitter:@k2kinky

Default