大正型毛紙収入印紙の発行日問題
初版 2022/01/27 12:02
改訂 2022/12/29 22:06
上の画像は大正型毛紙収入印紙であるが『日本印紙カタログ 第7版』(長谷川)ではこれらの印紙が発行されたのは「大正5年(1916年)4月30日」ということになっている。果たしてこの記述は事実なのであろうか。
『日本印紙類図鑑 2010』(下邑)によればこれらの印紙は「大正13年(1916年)4月30日」に発行されたという記述がある。しかしながら史実において大正13年は西暦1924年にあたり、日本印紙類図鑑に記載された発行年(西暦)は誤っていることになる。なお、日本印紙類図鑑の1981年版である『日本印紙類図鑑 1981』(下邑)を見ると「大正13年 1924.4.30」とあり、整合性のある表記がなされている。
『日本切手百科事典』(水原)によれば関東大震災で印刷局が大きな被害を受け、原版が焼けてしまった明治型毛紙収入印紙に代わって大正型毛紙収入印紙が発行されたとある。仮に『日本印紙カタログ 第7版』の大正5年(1916年)4月30日説を採ると関東大震災の発生した大正12年(1923年)以前にすでに大正型毛紙収入印紙が発行されていたことになり矛盾が生じるのである。
以上のことから考えると大正型毛紙収入印紙の発行は大正13年(1924年)4月30日と考えるのが妥当であろう。さらに当時の官報(https://dl.ndl.go.jp/pid/2955651/1/1
)を見てみると大正13年(1924年)4月30日に大正型毛紙収入印紙の発行が告示されていることが確認出来るのである。
推測ではあるが、『日本印紙カタログ』は『日本印紙類図鑑2010』を参考にした際に(実際に参考にしたかどうかは分からないが)誤った西暦である1916年をそのまま鵜呑みにして1916年から大正5年という発行日を導き出してしまったのではないのだろうか。
〈参考文献〉
・水原明窓(1974)『日本切手百科事典』日本郵趣協会
・下邑政弥(1981)『日本印紙類図鑑 1981』 フクオ
・下邑政弥(2010)『日本印紙類図鑑 2010』 フクオ
・長谷川純(2019)『日本印紙カタログ 第7版』株式会社鳴美