Peron5 フランク・ブリッジ  変化の正統

初版 2023/08/29 13:00

改訂 2023/08/29 13:00

フランク・ブリッジ/弦楽四重奏曲第1番ホ短調『ボローニャ』

第1楽章 アダージオ-アレグロ アパッショナート
第2楽章 アダージオ モルト
第3楽章 アレグレット グラッツィオーソ~アニマート
第4楽章 アレグロ アジタート-アレグロ モデラート-アダージオ モルト

ブリッジは番号付きの弦楽四重奏曲を4曲残している。

そのほかにも彼は四重奏のためのいくつかの記憶すべき作品を書いているが、この最初の弦楽四重奏曲には副題が付いている。

それはいかにもすっとぼけたようなもので、この作品が単にイタリアのボローニャで開催された作曲コンテストに入賞したことに因るらしい。

つまり、『あの、ボローニャでうけたやつ』という程度のものだ。

1926年の第3番、1934年の第4番はいわゆる『無調』の音楽であり、あたかも彼のピアノトリオの第1番と無調で書かれた有名な第2番のようにこの第1番のホ短調(1906年)や第2番ト短調(1915年)と対置される。

この作品では初期の後期ロマン楽派のような厚い音構造からドビュッシーやラヴェルの弦楽四重奏曲初演にヴィオラ奏者として加わっていた経験から彼らの浮遊するような調性感覚の混然となったスタイルが聴け、ブラームスの苦悩からベートーヴェン的内省性まであっさりと脱却し、印象主義的な重奏を聴かせる。

第1楽章には各楽器の音域の特性を知悉した縦に編み込まれたロマンティシズムが直截的に感覚を説得する。

エルガーの作品の第1楽章を思い出す。

不穏なチェロの警句が全体に広がり、前のめりに高音のヴァイオリンが閃く中をチェロが厚みのある音色で下降する。

やはり、この音楽でもチェロは非常に目立つ。

情熱的だけれど、何処かに醒めたジェントルな雰囲気が漂う。

抽象的だけれど、歌の流れが明確でそれを支える通奏の寄り添い方が見事な楽章です。

奥行きと立体感が素晴らしい。

ヴァイオリンパートに生まれるカンタービレを支える渋い低音楽器によって非常に深みがある。

起伏に富んだ主題の扱いが最後まで音構造に緊張感を与える。

第2楽章
は対照的に呆気にとられるほど美しい。

ブリッジ特有の鋭さが散見するけれど、中心はヴァイオリンやヴィオラ、チェロに受け渡されるメランコリックな旋律である。

古典的なアンサンブルがデジタルハイヴィジョンにリメイクされたように隙がない。

これを聴くとドヴォルザークのボヘミアンメロディーがいかに無作為で素のままであるかと言うのがよく判る。

特にこの楽章終盤のクライマックスは強いトレモロの合奏を織り込みながら見事に気品を保ちながら沸騰する。


第3楽章
はほんの少し舞曲的な要素も聴かれるけれど、それほど形式は意識されていない。

第2楽章までで力尽きたように軽々としたアンサンブルが聴ける。

第4楽章も続けて演奏されてもいいような印象もあるけれど、旋律は鋭く、低音楽器は力強くやはり聴き入ってしまうだけの構成の確かさの上にアダージオの歌がフィナーレの明確な収束に重く変転して行く。
凄いね。
この作曲家、これからつき合いが長くなりそう。

第2楽章を

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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