R・シュトラウス「四つの最後の歌」より
初版 2023/07/29 22:01
改訂 2023/07/29 22:10
ソプラノ:エリーザベト・シュヴァルツコプフ
第3曲 ヘルマンヘッセの詩による
『眠りにつくとき』
前回、曲の最後の曲、アイヒェンドルフの詩に基づいた第4曲『夕映えの中で』を記事にしたとき、まだ書いていなかった部分を続けてみた。
『最後の歌』というロマンティックな題名は、この後1948年11月に書かれた歌曲『葵』が発見されたことにより、『最後』という題名にさしたる意味はなくなってしまった。作品はこれを献呈されたソプラノ歌手の遺品から見つかったそうだ。
また、前に書いたように、シュトラウスはこの作品集を4つで止めるつもりがあったのかどうかも今ではわからない。
ただ、第3曲までのヘッセの詩とアイヒェンドルフの詩の間には『死』の受容について相当な開きがある。
詩を作った人間が違うのだから当たり前だけれど、曲を付けたR・シュトラウスはその豊かな色彩を持つ管弦楽法の選択肢からきわめて色合いを絞ったオーケストレーションを行っている。
一般にこれらの作品はいずれも『死』をテーマにした『詩』を扱っていると言われるけれど、『死を思う』主役はそれぞれ立場を異にする。
アイヒェンドルフの詩はダイレクトであり、R・シュトラウスは交響詩的共感を以てこの作品を取り上げている。
詩はモノトーンで、セピア色の諦念に染められ、受け容れる心の安らかな肉体からの剥離が無理なく描かれる。
アイヒェンドルフの歩幅とR・シュトラウスの歩幅はきわめて近くて、呼吸は重なっている。
ヘッセの詩による第3曲はR・シュトラウスの音楽表現がもっとも効果的に発揮されている。
深い眠りの中から解き放たれてゆく魂が夜の魔法の中に飛翔する。
その軌跡が独奏ヴァイオリンによって非常に美しくまた具象化され、次に詩を音化するソプラノの濁りのない魂に道を示してゆく。
闇の中に車輪を畳み、機首を立てた旅客機のように魂はさらにヴァイオリンを超えて肉声の滑らかで翳りのない熱い漆黒を目指す。
ゆっくりと瞼が閉じられ、唇から安息の寝息がひとつ洩れるほどの間隔で、闇から降りてくる柔らかな光の帯がホルンに乗ってゆっくりと落下し、詩的な音空間に広がりを生む。
そして音楽も死につながる闇自体も終わらせるように弦楽が響いてゆく部分は何度聴いてもR・シュトラウスの凄さが身にしみます。
この歌に関して、かなり前にグールドがピアノでソプラノ歌手の伴奏をやっている映像を見たけれど、本当にやりたかったのかなぁ…
この作品には独奏ヴァイオリンが欠かせない。
R・シュトラウスの全作品の中でもこのヴァイオリンのパートは記憶に残るものだから。
前にも書いたけど、ボクはあまり歌曲は聴かない。でも、ドイツ人の詩に対する言葉の扱い方はやはり耳から入ったものでは超えられない部分がある。
ルチア・ポップの歌も好きだけれど、このエリーザベト・シュヴァルツコプフというご婦人の歌はドイツ語の詩を音化するのには非常に優れた楽器であると、ボクは未だに思っています。
第3曲は 9分過ぎから前回と同じ音源です。
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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