経年の結晶 ブラームス/ピアノ四重奏曲第3番 読んで聴いた気になれるか。
初版 2023/07/27 18:22
ブラームス/ピアノ四重奏曲第3番ハ短調op.60
第1楽章 アレグロ マ ノントロッポ
第2楽章 スケルツォ: アレグロ
第3楽章 アンダンテ
第4楽章 フィナーレ:アレグロ コモド
ブラームスのピアノは独奏で聴く時とアンサンブルの中に入った時とではその役割を緻密に計算されているだけ渋くくすんだ音色が弦楽の醸す多彩に融和して全く別の魅力を発揮する。
この第3番のピアノ・クアルテットは元々第1番や第2番に先駆けて作曲された嬰ハ短調の作品を生来の慎重居士であったブラームスの性格が推敲の果てに作曲から20年を経て改定されて世に出たものだ。上の写真は若い時と老年期のブラームス。若い時は男前だったよ。ストレスのないショパンみたいな顔してた。
初演はブラームスのピアノとヘルメスベルガー四重奏団のメンバーで行われており、そのメンバーの中では特に名を馳せたチェリスト、ダーヴィド・ポッパー(あんまり聴かれないけれど、ボクはこのチェリストの第2チェロ協奏曲がとても好きなのです。)のパートに非常に大きな役割を与えている。
特に第3楽章の幅の広い豊かな歌はそのチェロの歌なしには成り立たない。
ピアノの第一音から第1主題は上昇することなく、痛切で陰鬱。
死を悼む」調べのような弦楽のトリオにピアノのc音が重なる。
ここから体力勝負のようなパテティック(悲劇的)主題が展開されたあと、ピアノの歌う歌にあわせて雲間から光が指すように細かく弾かれる弦楽のまとまりにはベートーヴェンの第7交響曲のリズムが記憶の頭をもたげる。
しかし畳みかけるピアノとアンサンブルの隙間は詰まっていてロマンティックな熱気は内圧を高めながら情熱は逃げ場のない密封状態で自ら焦げ付くまで高まる。
各主題をつなぐ4つの変奏がブラームスの堅牢なロマンティシズムを緩やかに冷却し穏やかに深呼吸をさせる。
聴きようによってはとても耐えられない痛みを伴った葬送の音楽のようにも聴こえる。
第2楽章のスケルツォはスラビックなダンス音楽の原型を保っていてステップやしなやかに回る体の流れをイメージさせる。
でも、それは第1楽章に不要な葬送のイメージを持ってしまうと、横たわる冷えきった青年の屍の周りで踊る死の舞のようにも聞こえてしまう。
要するにその暗さをたたえた音楽であることはロマンティックであることと同じレベルの物語性を持っている。
20年かかった完成までのきっかけと、きっかけから純粋な音楽的完成にこぎつけた時間の中に流れたものは明から暗までの朱夏から白秋までのブラームス自身の心の有り様を指しているのかもしれない。。
その第2楽章があってこその第3楽章のアンダンテ。
この音楽は素晴らしいよ。
ボクのチェロ好きが余計にそう思わせるのだろうけど、ホ長調の瞑想的なチェロの旋律はブラームスのチェロを扱った音楽で白眉だね。
第4楽章もエネルギッシュなんだけれどピアノの、なんていうか弦楽器で言う無窮動的なリードに合わせてヴァイオリンが歌い上げながら高まってゆく時、ピアノに顕れてくる音形はベートーヴェンのいわゆる運命のリズム。
経過部で明確にそのリズムが総奏され、ブラームス特有の憂いのアレグロに加わるベートーヴェン的ベクトルが説得力の大半を占めています。
まるで合作のような…
それぞれの楽章が魅力的で複雑ですが、ここは出色のこの方たちの一期一会を
やっぱり、息苦しくてもデムス+バリリSQだなあ…根性で全曲。
(00:05) 1. Allegro non troppo
(09:58) 2. Scherzo: Allegro
(14:11) 3. Andante
(23:27) 4. Finale: Allegro comodo
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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