不安と祈り

初版 2023/07/13 18:36

アニュズ デイ Agnus Dei(神の子羊)

この曲は弦楽四重奏曲からの弦楽のためのアダージョとして有名

順番としては弦楽四重奏曲第1番op.11の第2楽章であったこの曲を自身が弦楽合奏のためのアダージョとして編曲した。

そして彼自身ベトナム戦争を経験し、戦争に対する自らのスタンスを音楽で示すものとして1967年に作り直されたのがこの無伴奏合唱曲「アニュス・デイ」。1967年といえばベトナム戦争が泥沼化し、多くのアメリカの若者が命を散らしていた時期。

ボクがこの曲を知ったのは一本の映画だった。

この曲はカンボジア内戦を背景に描かれた1984年制作の英国映画(The Killing Fields)の中で主人公がフィールド一面に白骨が敷き詰められた象徴的な死の原野の中を彷徨うシーンで使用され、その音楽はその映像とともに静謐と絶望と平和への渇望の交差した情景を浮き上がらせていた。

ニューヨーク・タイムズ記者としてカンボジア内戦を取材し、後にピューリッツァー賞を受賞したシドニー・シャンバーグの体験に基づく実話を映画『キリング・フィールド』は、1984年のアカデミー賞において、助演男優賞・編集賞・撮影賞の3部門受賞を受賞している。

ボクは東京で司法浪人をしている時代、

ボクは親友のアパートに何か月か転がり込んでいたことがあり、その彼が留守の間、何気に午後までテレビを見ていて、その映画の予告編だか解説だかを観た。

その時、その音楽はそこに繰り広げられるすり鉢状の真っ白い骨の原野をサクサクと乾いた音をたて、踏み崩しながら、生きるためにひたすら進む主人公の狂気と生への渇望と死への慄きを慰撫するように歌われていて、僕はその静謐の調べに内耳を貫かれていた。

当時はまだパソコンが普及している時代ではなく、サミュエル・バーバーという散髪屋みたいなアメリカの作曲家のことなどほとんど知らなかった。(彼はその時代にあってアルカイックな様式美も持ち合わせている堂々とした作曲家である。交響曲をはじめピアノ曲、室内楽、その他さまざまな分野の音楽に長け、古風な様式を貫いた厳格な古典的作品が多くある。)

知らなかったからこそ、裸の耳で感じたものが今の今まで深々と脳裏に刻まれて残っている。

そしてその旋律をそのまま肉声に載せたのがこのアニュス・デイ。

このアニュス・デイは 神の子羊(イエス)を唱った祈祷文で、

レクイエムによく聴かれるが、バーバーは作品11の合唱曲として残した。

何となく、誰もどこかで聴いたことがあるかもしれない。寂寥と静謐を必要とする映画にはよく使われる。でも本当にふさわしいか?

…この曲は

誤解を恐れず、平たく簡潔に言えば悲惨と空虚と無意味を目の当たりにしてたくまずして口にするときの『Oh! My God』の祈りである。と思う。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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