二番めの宝物 ベートーヴェンのチェロソナタ第1番

初版 2024/12/05 22:59

ベートーヴェン/チェロ・ソナタ第1番ヘ長調op.5-1

第1楽章 アダージォ・ソステヌート-アレグロ

第2楽章 ロンド:アレグロ ヴィヴァーチェ

ベートーヴェンが作曲した記録上の5曲のチェロとピアノのためのソナタは

ベートーヴェンの室内楽の中で、ボクにとって弦楽四重奏曲に次いで大切な音楽です。

もちろんヴァイオリンソナタも素晴らしいのですが、音を長く保って響かせる、いわゆるソステヌートはヴァイオリンの親方よりも、次男ながらちょっと茫洋として肺活量のあるviolinCello=チェロの得意とするもので、ピアノの鍵盤楽器としての魅力に対して非常に弾力のあるフォーマットでありつつ、ヴァイオリンの眷属としてのカンタービレに優れた美点を持っています。

ベートーヴェン以前はまさにそのフォーマットに着目されていて、チェロソナタはチェロの伴奏つきピアノソナタの域から抜け出ることがなかなかできなかったようです。
ベートーヴェンはその辺の決めごとに天衣無縫であったモーツァルトを通過していて、モーツァルトが謙遜気味にヴァイオリンの伴奏つきピアノソナタと銘打っていた作品達の中にある、その主従を超えた響きの可能性を知悉していたと考えられます。
5曲しか残されなかったチェロとピアノのためのソナタは彼の16曲に及ぶ(新たに発見されたロ短調のものがどういう位置づけなのか、真贋を含めて議論があるところですが、)弦楽四重奏曲の世界と同じような段階を踏んでいる点も興味深いね。

初期のこの第1番のヘ長調の序奏には既にピアノとチェロは拮抗するパートを与えられていて、歌い出しの深いチエロのソステヌートを美しく立体的に縫い上げてゆくピアノの簡潔でありながら力感を感じさせる起伏が何とも言い難い魅力です。序奏を抜けた主部の歌はピアノからチェロに受け継がれ、両者の質の違いを浮き立たせながら浮き立つような間合いを作ってゆきます。
ヴァイオリンだともう少し性急でエネルギッシュに顎を天に向けて叫ぶところがあるんですが、チェロはホントにピアノによく合いながらも拮抗する楽器です。
チェロの技術的な部分はベートーヴェン自体の知識にも拠るのでしょうがヴァイオリンほどの工夫はないのかも知れません。

それでも、幅の広い音楽の流れがピアノの速くエネルギッシュなパッセージすらしっかり包み込むゆとりを持った音楽です。

第2楽章はさらに音楽が生きていて、ピアノの民謡風の旋律に渋い色のフィルターを掛けながらチェロが追いかけてゆく。
この頃のベートーヴェンの気分が非常に晴れ晴れと醸し出されています。
きっとこの頃彼が出会ったフランスのチェリスト達、デュポール兄弟は素晴らしい人だったんでしょうね。

いろんな演奏を聴きましたが、アナログレコードは田舎に帰ってからほとんど初期のヤフオクで売りましたので手元にはデュプレとマイスキー&アルゲリッチ盤、そしてロストロポーヴィのチェロにリヒテルのピアノという当時ソビエトのドルの稼ぎ頭であった巨匠の共演くらいですか。1番の若さの持つ風通しのよさはリヒテルの求道者のような峻厳さが少し大柄な感じがして敬して遠ざけることが最近は多いです。

以前はシュナーベル⁽古っ!)とフルニエのチェロのもちろんモノラルとか、グルダとのフルニエの全集とか、色々聞いていましたが、

少し線の細いマイスキーのチェロがアルゲリッチのひらめきに引っ張られるテンポが曲にあっている気がしております。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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