若書きのピアニズム
初版 2024/11/20 15:25
改訂 2024/11/20 15:25
ブラームス/ピアノソナタ第2番嬰ヘ短調OP.2
この作品は、ブラームスが名ヴァイオリニストで友人であったヨーゼフ・ヨアヒムの紹介でシューマン宅を訪れ、世に出るきっかけとなった自作のハ長調のソナタを披露し、絶賛された時よりも早く、19歳、1852年ハンブルクで書かれている。作品番号は第2番となっているが、出版する作品として2番目に書かれたハ長調の方が人気が出るだろうというあくまでも収入の問題であったようこの
この第2番のソナタは実は作品番号では本来は1が与えられるべきであったか、あるいは若書きの習作として番号なしがふさわしいとされたのかもしれないが、『どこが習作?』と言いたいほど煌めいている。
聴いていて、若い意欲が全体に漲っていて、やや未整理な感じがするのはボクが晩年のブラームスの緻密さをいやというほど刷り込まれているからか。
第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ・マ・エネルジーコ
指定どおりのエネルギッシュな曲想で急・緩の技巧的なくり返しはリストっぽい。
でも、この頃、ブラームスは当時のピアノの主流を分けていた一方の内省的演奏者クララ・ヴィーグにピアニストの理想を見ていたようだ。
この作品は彼女に敬意を込めて贈られているが、込められた私情は紛れもない憧れでしょう。
これ以後、恩人ロベルト・シューマンの妻に対するブラームスの叶わぬ恋と芸術家としての変わらぬ敬意が彼の作品に大きく影響する。
ややこしい人だね。この人は。
でも、この頃は少年ブラームスが大ピアニスト、クララに抱いている純粋で清新な憧れが微笑ましい。
第2楽章 アンダンテ・コン・スプレッシオーネ
これは古いドイツ民謡から採られているようだ。
ブラームス自身が説明しているという。
メロディよりもエネルギーに溢れた楽章です。
少しベートーヴェンっぽい所からいきなり古いドイツのミンネザング化聴こえてきます。(ミンネザングはドイツ語圏で昔からの愛を歌う抒情詩を作詞者自ら歌っていたようですが、ヴォルフで開花したリートよりも地方色がある国民歌と言えるでしょうね。)
ここはシューベルトみたい。 この辺素晴らしい!若書きだからいろんなお手本が明滅する。それはベートーヴェンの選帝侯ソナタやモーツァルトのハイドン的な作風と同じ若い作曲家の通過するところですよね。
第3楽章 アレグロ スケルツォ
スケルツオを置いたところがいかにもベートーヴェン的。ただ彼のスケルツォはまだ舞踏の優しい面影がほほえましい。シューベルト寄りの若書き。
第4楽章 フィナーレ イントロデュ・ソステヌートゾーネ
ここで朴訥に歌われる旋律は後に彼のバラードとかに出てくる彼独特のつぶやきに満ちていて、そこにベートーヴェン的なイデオムが重なり、年齢と作風の間に大きなずれが聴ける気がする。彼は後期のベートーヴェンも後期のシューベルトも経験している若きピアニストであったのだから。
それぞれの楽章に魅力があるけど、第3番と比べるとやはりピアニストの食指は鈍いようだ。あんまりいい演奏がない。
纏まりよく演奏し、ブラームスの曲として押し切る力があるピアニストは、逆に言うとスケールが大きくなりすぎるような気がする。
何でケンプの演奏がYouTubeに無いんだろうか。
ボクは今、クラウディオ・アラウの演奏で聴いています。第2楽章をもう一度繰り返して聴きます。
アラウの演奏はリストかベートーヴェンのように響きます。
でも、何処かにアラウのラテン的な感性が香っていて、重厚な中に体が動くようなカンタービレがあるようです。
リヒテルを聴いていて「凄い」と思ったんだけど、何か決まっちゃってるな、と言う感じがしたのはこのニュアンスが感じられないことが原因だろうかね。でも、これはこれでいい演奏であることは確かです。
この作品は
第3番のように成熟されていないソナタだけれど、豊かで暖かい。
ボクはこのアラウについては、普段あまり聴かない巨匠だけど、この第2番のソナタはよく聴きますね。
だけど、CDがない。
ボクのはフィリップス盤のアナログ・レコードをソースにしたダビングです。ノイズリダクションはdbxです。CDを探していましたが、ピアノ作品集としてまとめられた中に第3番のソナタと一緒に入っていました。
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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