Person16 アルベリク・マニャール 触発の歌

初版 2024/04/19 22:36

改訂 2024/04/19 22:52

フランスの作曲家音楽的特徴は良くも悪くもフランスのブルックナーとか言われる。父は有名なフランシス・マニャール『フィガロ』の主幹 親の七光りは感じられない正義の人

アルベリク・マニャール/正義の賛歌 op.14

1894年の世に言う『ドレフュス』事件。
揺れる第3共和制の政治体制下で軍部による犯人ねつ造とその後のなりふり構わぬ自己正当化の無節操ぶりにフランス共和国家の愛国心は世界の嘲笑に晒された。それはユダヤ人砲兵大尉アルフレッド・ドレフュスの無罪確定を機にするものであった。

フランス人がプライドを持って声高に叫ぶ博愛と勝利と正義はこの事件で地に落ち、右派と軍の権威と信頼はさらに沈んだ。ユダヤ人国家建設を目的とするシオニズムはこの時存在意義を世界に向けて示し、現在のイスラエル国家建設につながるえらい事件になったのだが、ボクは今更ドレフュス事件をなぞり書きするつもりはない。

その事件を中心となるフランスにいて経験し、『正義』の示す結論に感銘を受けたマニャールが1902年に書き上げたのが、この作品である。

実際にドレフュスの無罪が確定したのは1906年なのだけど、彼はその中心の都市にいて1901年当たりから書き始めている。

賛歌であるから深く陰鬱な序奏から栄光の光までの道筋が簡潔に描かれていてわかりやすい。

特徴的なのは彼のシンフォニーでも聴かれるマーラー的管弦楽法と音響が様々な方向に交差するブラームスやブルックナーの典型的な交響が特徴である。

マーラーがブルックナーのイデオムで作り上げればこうかるかなあ。

彼はもう一曲自分の奥さんに『ヴィーナスへの賛歌』というのを捧げているけれど、ボクはどちらかというと発想的にはフィンランディアの苦悩から勝利へ向かう歌が、ちょっとひねくれてるけど真面目に歌われるこちらの作品のほうが好きだね。

不穏な事件の象徴的な旋律がのっけからグイグイ前に出てくる。


底が厚い低音弦楽器の総奏から始まり、金管の咆吼でとても説明的に流れる。


現実の無実を信じ開放されることに何の疑いも抱かなかった誠実な軍人の潔白の天を暗鬱な運命が黒々と覆っていく。
禍々しい音楽であるはずなのだけれど、この人の性格なのか育ちの良さがでていてそこで奏される弦楽はとびきり美しい。

希望を謳うハープのピチカートと絶望のコントラバスが対置され、その上を時の流れが音に変えられて流れて行く。
最初のテーマが繰り返され、語られる物語が空しく中心となる個人を除いて流れを引き戻して行く。
しかし、やがて『個』の訴えは『総』の確信に支えられ、高く持ち上げられる。


うつむいた顔が上がったその前に広がって行くのは自分が一点の曇りもなく信じた神が掃いた滲みひとつない天空の白さ。
心に満ちた安息と噛みしめるような喜びが染みこむように総奏される弦楽の広々としたエンディングで閉じて行く。


ドイツの侵攻に妻と子を疎開させ、自らは家を守って銃弾に倒れたこの人の真っ直ぐさがとても良くでている音楽です。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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