気配 ピアノソナタ第5番
初版 2024/03/18 00:01
ピアノ・ソナタ第5番ハ短調OP.10-1
第1楽章 アレグロ モルト エ コン ブリオ
第2楽章 アダージオ モルト
第3楽章 フィナーレ:プレスティッシモ
短いかくてコンパクトに纏まった作品。そしてベートーヴェンの後期に至って自分の裡に持つ内省の音楽の引き出しに仕舞われたであろう印象深い第2楽章を中心に躍動と劇性の厚みで挟んだ佳品でもある。
第8ソナタとの近似生を言われる。
確かに楽章構成(ハ短調-変イ長調-ハ短調)、パトスが支配する第1楽章、平穏の中に収斂する歌の美しさを持つ第2楽章、息を詰めたまま疾走する第3楽章。雰囲気は似ている。
似ているというよりもこの作品の各楽章はそれぞれ第8番のソナタに育っていったのだと考えている。
同じ引き出しから出されたとき、それを表現する作家の成長により、音楽は細部の緊張を増し、劇性は四方にわめき散らすのではなく、やがて訪れる平安の歌を見つめながら主情は冷静にその高低を調整されている。
このログは基本展示したグルダの全集https://muuseo.com/Mineosaurus/items/287?theme_id=43332
を拾い聴きしながら、年取って感じ方が変わった部分なんかを振り返りながら書いているけれど、時々横道にそれていく。
グルダの演奏は5番をそのある姿として表現し、ここで選んだアルフレッド・ブレンデルの演奏は完成されたベートーヴェンのスタイルから表現する。(あくまで僕の耳に聴こえる印象)
前者の演奏をずっと聴いてきた耳にとって初めてブレンデルの5番を聴いたときは新鮮だった。
これほどの内容が詰まった音楽であったかと、好きだからと丸かじりしていたリンゴでは気づかなかった切りそろえたリンゴの種の近くに溜まった蜜を初めてそれとして口に含んだときの新鮮さ。
左手が鳴るときの右手の動きの精密さ。二つの音楽が混然と耳で終わるのではなく、耳から入って我が頭で融合する新鮮。
そこには直ぐ隣に第8番のソナタが聞こえるようでした。
第2楽章の旋律の美しさはむしろ有名なアダージオ・カンタービレの行きついた美しさよりも延びしろを感じさせる。
ベートーヴェンの後期に昇華された素材がその気配を聴かせながら旋律の中にまだ生のままの歌として聞こえる。
ブレンデルはそこをボクに聴かせた。
『どっちを聴きたい』と悲愴ソナタとこの第5番を出されたら、へそ曲がりのボクはこっちをとりそうだね。
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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