思い切って初期へ ピアノソナタ第4番変ホ長調

初版 2024/03/10 14:23

改訂 2024/03/17 23:40

ベートーヴェン/ピアノソナタ第4番変ホ長調OP.7

第1楽章 アレグロ・モルト・エ・コン ブリオ
第2楽章 ラルゴ・コン・グラン・エスプレッシオーネ
第3楽章 メヌエット:アレグロ
第4楽章 ロンド:ポコ・アレグレット・エ・グラッツィオーソ

ベートーヴェンの初期の番号付きのピアノソナタでは、僕の経験はこのソナタから始まる。
まるでオーケストラを聴くような色彩感と音色の中にレンジの広い管弦楽曲のようなきらびやかで明朗な響きに溢れる。
ボクははじめにこの作品をもっと違ったピアニストで聴くべきだったかも知れない。
アルトーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ。
未だのこの第4番のソナタではこの人の呪縛から逃れられない。

深々とした打鍵のその芯まで磨かれたバスの響き。
高音のマルカートでエッジの切れとまろやかさが共存する疵のない鋼の切断面のような切れ味。
全てが隠れようもなく重層的に聞こえ、練り上がった音楽がそれぞれの音の層を滲ませることなく聞こえる。


この人のペダルはいったいどうなっているのか?
他のピアニストを聴いた後にこのピアニストを聴くと、こんなに音が多く、はっきりと聴き取れることに驚く。
録音段階で何かしたんじゃないかと思う位だが、どうもそうではないらしい。
古いモノラルの録音の実況盤であってさえも、その特徴は聴き取れる。


第2楽章のラルゴの音の豊かさ。
それはアシュケナージの華美な拡散する虹のような音彩ではなく、響きの残る中で新たな打鍵の音に隠れるこなく、重層的に流れる音列のイメージ。この楽章にまだ、後期の内省的な短音の世界はないけれど、豊麗にに響きながらクッキリと刻むパッセージのその粒の揃った丸さ。
ヘッドフォンで聴きながら、ここが、あそこがと、止めながら聴いているとやっぱり面倒になってきてついつい音楽の流れに任せて聴き終わってしまっていることに気づく。


第3楽章、スケルツォのようなメヌエット。
僕がもっとも好きな楽章。
まるで、ふうわりとしたスカートの裾をつまんで膝を折って会釈した貴婦人が優雅に舞い始めるような典雅の中に、女性的な歩みのスマートさがあって、チラリと翳りをみせ、心が沸き立つようなフレーズが何度も優雅さの中にとぎれながら繰り返される。
ベートーヴェンが晩年そぎ落としていった目で見た風景や耳で感じたものの形がまだ生々しく音の中に残っている。

抽象化されていない美しさが浮かんでは消えて行く。
終楽章のロンドのバランス。
アルペジォは見事に粒だっていて同じ丸さなのにそれぞれが硬さと当たる光の薄濃によって単純なのに聴き尽くせない深さを感じさせる。
こんなにたくさんの音が鳴っているのか?そう思うほどミケランジェリの弾いたこの曲は気品と優美と豊饒に満たされている。


血から入る音楽ではなく、非常に冷徹な理知から導き出された仕事です。
ベートーヴェンのピアノソナタ第4番なのですが、ミケランジェリの4番です。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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