Person11 ジョルジュ・エネスク 曲者のリリシズム
初版 2024/02/18 12:38
エネスク/ピアノ四重奏曲第2番ニ調 op.30
第1楽章 アレグロ・モデラート
第2楽章 アンダンテ ペンシエローソ(思慮深く) エド エスプレッシーヴォ
第3楽章 コン モート モデラート
第1番の作品16からは34年の隔たりがある。
それは彼の作風から生のままで残っていたロマン主義的音楽の伝統はすっかり昇華され、見事なまでにその天才の個性を発揮している。
指揮者としての透徹した音構造の設計。
弦楽楽器奏者としての高度な技術的欲求とロマンティシズムの簡潔な結合。
練達のピアノの名手としてアンサンブルを締める意思的な高さ。
そしてその全てを支える民族的音楽の個性を感じさせる素晴らしい芸術的ナショナリズム。
現代の音楽芸術家が一芸に秀でるために犠牲にしてきた要素が全て個性の統合されている。
第1楽章のピアノに導かれる明快な主題が弦楽のヴェールを纏いながら煙のように揺れながら立ち上ってゆく。大きく開いたピアノの音の狭間に弦楽が緻密に抒情を流し込む。
歌う楽器は歌い、ピアノは同じ方角に向かって引き波の上に寄せる。再現部で気づいた。ピアノと2つの弦楽のためのソナタとでも呼びたいほどチェロとヴァイオリンは融合し、あたかも低音部を持ったヴァイオリンとでも言いたい楽器に姿を変え、ピアノと対峙しつつ補完する。
停滞する瞬間が全くない。
新しい皮膚感覚に包まれたリリシズムが曲の全身を貫いている。
第2楽章、強いて言えば第1楽章のアレグロ・モデラートとこのアンダンテの違いを際立たせるのは至難ですね。
弦楽はより歌い、ピアノは思いに沈むように歌の背後に潜む。中間部に第1楽章の主題が薄く色を変えて回帰し、思いの外強い気分が作り出される。
洗練の極み。
決して難解ではないけれど、もの凄く画数の多い美しい漢字を読まされているような気分になった。
近代以降の作品でちょっと出会わなかった感覚でした。
第3楽章の推進的なリズムの中にある劇性と静謐。
調性は曖昧だけれど、恣意的なものはなくて口伝される民族音楽が持っていた肉声からの音楽の縦横の繊維が第1楽章からの設計に合わせて丁寧に削ぎ落とされ弦楽とピアノが替わって再現してゆく。
その間の絶妙!
弦楽とピアノのバランスは作品に不可欠な書き込まれない指示となって、演奏者を縛っているけれど、そこから生まれる作品の自由はまさにアンサンブルの生んだ創造として作曲者の意図に直結する。
混沌に顕れる第1楽章の主要主題。転結が見事に完成。
うん。凄いぜこれは。
Youtubeでは全曲聴けるCDもあって、正直ぼくの手持ちのものよりも厚い演奏がある。で、お、客観視するにはこの程度の中庸がいいと思う。CDの方で第2楽章をサンプルに挙げていたのでここでは他の楽章を
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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