あまりにも個性的な『アメリカ』

初版 2024/02/08 10:31

改訂 2024/02/11 09:43

ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲第12番ヘ長調op.96 B.179「アメリカ」


第1楽章 アレグロ マ ノン トロッポ
第2楽章 レント
第3楽章 モルト ヴィヴァーチェ
第4楽章 ヴィヴァーチェ マ ノン トロッポ

ボクは学生の頃この作品を友人によく聴かされた。
東京文化会館へもNHKホールへもスメタナ弦楽四重奏団が来るたびに連れて行かれた。
正直言ってスメタナSQを聴くならベートーヴェンの後期を聴きたかった。
ボクはこの作品は苦手である。
出来からいえばボクは13番の方がよいように思うのだけれど、どうかなあ。
一言で言えば通俗的。
この作品はホントかどうか知らないけれど、1893年の6月8日に夏休みを過ごしたアメリカ・アイオワ州スピルヴィルでわずか3日でスケッチを終え、それから2週間も経たずに完成されている。
最初からおそらく主要な部分のスケッチは頭の中にあったのではないかとも思うけれど、アメリカの風土に触れて、触発されたものが出口を求めていたのかも知れない。
あまりにも個性的だね。
素材の扱い方がどうも癖があってそれが合わないのかなあ。
でも、当時NHKホールで確かレコードにもなったと思うけれど、スメタナSQがデンオンのPCM録音を行ったライブステージで演奏したときの第2楽章には鳥肌が立った。
鬼気迫る演奏だった。
この楽章の素材はゴスペルだといわれている。確かにそんな風に聞こえる。
でも、スラヴの大地の肥沃な土の匂い、両手ですくった腐葉土が手を払っても洗ってもいつまでも指先に残っているような感覚がつきまとう。
もっといえば細身のガラス瓶の底にオリーブが一個あってそれがとろみのある甘ーいシロップに中に沈んでいる。
そのオリーブを食べたいんだけど、そのためにはそのシロップをほとんど飲み干さなければならないって言う感覚。
三部形式のニ短調で書かれたメランコリックな楽章だけれど、そのアンサンブルの扱いは実にシリアスで
ヴァイオリンの哀切な歌に続くチェロの歌がヴァイオリンのピチカートやロマンティックな高音に包まれながら暮れてゆくような部分は心が剥がされてゆくような切迫感がある。
とりわけボクは昔聴いた圧倒的なトレモロの上を暗い海に向かって櫓をこぐように進む演奏が刷り込まれていて、この楽章だけは特別に思い入れがある。

演奏はあまり粘らないものがいい。
音楽自体がこってりしているからザッハリッヒに演奏される方が本質に近づけるような気がする。

例えばクリーブランドSQとか

ここで聴いているのは手持ちのガルネリSQのもの。鋭さは角が取れて恰幅のいいまろやかな音色の中でメランコリーが中和されていて聴きやすい。Youtubeの演奏は第2楽章 レントのみを拾った。写真は年取ったメンバーのもの。ルービンシュタインとの共演の時は子弟の演奏であり、まだ若いのだけれど、演奏は同じみたいだね。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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    グリーン参る

    2024/02/08 - 編集済み

    おすすめします。

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      Mineosaurus

      2024/02/08

      グリーンマイル様コメントありがとうございました。シュターミッツSQって初めて聴きました。カール・シュターミッツの名前を冠しているのでしょうか?ドヴォルザークの弦楽四重奏曲をコンプリートしている弦楽四重奏団ってチェコ以外にもいるんですね。
      Youtubeで全曲聴けるんですね。12番のレントと13番を聴きました。第2楽章最後トレモロとピッチカート迄インテンポです。ドイツ的なドヴォルザークですね。13番はやっぱりいいです。作品の完成度が上がると、演奏家の共感度も第一楽章の歌に溢れた音楽をまるでシューベルトを引くように弾きます。アルバンベルクSQ がこの曲を弾けばきっとこんな感じかな。
      第2楽章のベートーヴェンへのオマージュの言おうな序奏から、叙景的なカンタービレが続く曲ですが、くどくなくていい。
      全曲コンプはとてもできませんが、後期のものをボツボツ聞かせていただきます。ありがとう。

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      グリーン参る

      2024/02/08

      Mineosaurusさん
      シュターミッツ四重奏団、チェコの楽団なんです。技術は正確ですがピリピリした緊張感はなく、ドヴォルザークの素朴な歌を聞かせる暖かい演奏です。プラハ、スメタナ、いずれの四重奏団の全集も聞きましたが、聞き終わったあと一番元気になれました。
      このポスターを見る限り遊び心もたっぷりなようです(笑)、

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      Mineosaurus

      2024/02/08

      やっぱりチェコなんですね。演奏はドイツが勝ったオーストリア風。カール・シュターミッツはいくつかの弦楽四重奏曲が知られていますが、モーツァルトの晩年のような感じです。現代の四重奏団が名前で使ってるとなると、かなり知られているのかもしれませんね。youtubの検索では日本語では出てきませんでしたが、英語版では全集が一極残らず彼らの演奏で聴けます。いい世の中になったものです。
      スメタナの2曲ともこのSQ で譜面付きで聴けます。聴力を失った晩年の弦の擦過音の用い方はベートーヴェンの晩年の弦楽四重奏曲に共通する部分がありますね。

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    とーちゃん

    2024/02/11 - 編集済み

     鳥肌が立つ 演奏に触れる機会を持てる事は、
    本当に幸せだと思います!

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      Mineosaurus

      2024/02/11

      とーちゃんさんコメントありがとうございました。第2楽章の終わり、それまでの豊かな感情表現が本心をのぞかせたようなトレモロの凄味に虚を突かれましたね。

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