Person 12 ジェラルド・フィンジィ -静かな男の激し方-
初版 2024/01/05 12:29
ジェラルド・ラファエル・フィンジィ(1901~1956 9.27没)
イギリスの作曲家・園芸家。円熟期に至る前に没した。隠遁の作曲家であり寡作の人。自己批判が厳しく作品を世に出すことに多くの歳月を要した。ここで紹介するクラリネット協奏曲は1948年から1949年にかけて作曲されている。調性音楽である。
ジェラルド・フィンジィ/クラリネット協奏曲ハ短調op.31
第1楽章 アレグロ ヴィゴローソ(力強く)
第2楽章 アダージオ・マ センツァ リゴーレ(厳しくしないで)
第3楽章 ロンド:アレグロ ジョコーゾ(活き活きと)
一つひとつの作品には鄙びた奥床しさと侘びさびに通じる涼やかさがある。
あまり有名な作曲家ではないが、彼の小品には意外と日本にもファンが多い
ただ、この曲はちょっと彼の頑固さと芯の強さが聴ける。
シンプルで力強く、厚い弦楽が柔和な優男のくゆらせる紫煙の向こうから意外なほど決然と聞こえてくる。
まるで重量級のピアノ協奏曲のための序奏のよう。
滅多に荒ぶることのない素朴な男が怒りに噛みしめた奥歯からわずかに力を抜いた刹那、クラリネットの柔和な旋律が滑り込む。
彼が後に作曲したチェロ協奏曲へのヒントにもなっているのかも知れない。
クラリネットは管弦楽のロマンティックな流れに逆らわず、その表層を滑らかに移ろって行く。
透明な水面にオレンジ色の落陽が映り込み、揺れながらセピア色の全景は黄昏に向かって流れる。
クラリネット協奏曲というジャンルに古今どれほどの作品が残されているのか、モーツァルトやウェーバーのような一部を除いてはなはだ知識が乏しい。
優しく、上品なロマンティシズムが身上のフィンジィの作品としてはチェロ協奏曲と並んでジョンブルを感じさせる腰の座った作品です。
第1楽章は古今のクラリネット協奏曲の中でもシンフォニックな音楽に仕上がっています。
冒頭の緊張感はチェロ協奏曲を彷彿とさせます。
クラリネットが入るまでの序奏はいいですね。対位する弦楽も協奏しつつ協調する。ドラマティックでありながら端正な息づかいに作曲家の多様な力量を感じます。
一度目はクラリネットに集中して。
二度目はその遠景に流れる弦楽の密やかな旋律が高揚するドラマを聴き、
三度目にその混然と調和を聴く。
第2楽章の密やかな抒情はクラリネットの音色がやはり前面に出ることでこの管楽器のもっとも美しい緩徐楽章に対する適性を十全に感じさせます。
フィンジィの弦楽合奏の美しさは、主旋律を奏でるクラリネットの背後からひっそりと影のように寄り添う部分の自然さにあります。
クラリネットを中心に据えた協奏的作品の中でこの緩徐楽章はもっとも成功している作品であると思います。
ボクが今聴いている演奏はライブなのですが、ここはYouTubeのCDの方が良い雰囲気ですね。
ただ、第1楽章の生命力はNaxsosのCDでは少し弱いか。楽譜を追いかけている雰囲気が感じられ、自発性に乏しい。
もっとも、ボクのイメージとのズレですが。
演奏がドイツ音楽のように、選り取り見取りというわけにはいかないのでその辺がもどかしい。
第3楽章は緊張から解放されたような自由な疾走感がいい。
クラリネットに重なって行く弦楽リズムが何となく鄙びていて優しく、少し描写的ですが第1楽章と第2楽章で創った大荷物を軽々と背負い込んで、息も乱さず軽快な足取りを聴かせる。
調子の良いときのディーリアスを思わせる。
嫌味のない爽快な音楽。
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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