パリーのシンフォニー No1 

初版 2023/10/26 01:06

改訂 2024/02/13 21:30

パリーとロンドンフィルハーモニー管弦楽団

交響曲第1番 ト長調

第1楽章 コン フォーコ

第2楽章 アンダンテ

第3楽章 プレスト-メノ モッソ

第4楽章 アレグレット~モルトヴィヴァーチェ

元保険の外交員(有名なロイズ保険会社 有名だそうだけど、保険会社そのものより、そこの外交員をやっていた浦沢直樹の『マスター・キートン』で知った名前だね。そこからKBMに叙されるまで彼はどれほどの努力をしたのかな。残念ながらエルガーほどいろんな映画になっているわけではない。

でも彼がイギリスの近代音楽の父と言われることに何の異論もない。スタンフォードやエルガーやジェラルド・フィンジィやディーリアス、ベンジャミン・ブリテン多士済々。ボクの好きな作曲家はイギリスにも多いけど、このパリーおじさんはシンフォニストであった点でボクの一番のお気に入りなのです。

その彼の交響曲と言える作品は5曲ありますが、いずれも素晴らしい。ボクは5曲の交響曲を3枚のCDでばらばらに所有していましたが、元のCDは誰かに貸したものか、どこを探しても見つけることができず、買いなおそうと思ったら全集しか見つけられなくて愕然としました。

彼はワグナー夫妻と親交があったために、イギリスでのワグナーの代弁者と言われたらしいですが、彼の作風にそんな影響があるかと言えば、そんなふうにも感じられない。むしろメンデルスゾーンやシューマンの影を踏みながら、ブラームスの後を追ったような作風だと感じます。特に彼の作品にはブラームスを通過しなければ出てこないような個性の収斂が感じられます。風通しの良いブラームス。そんな感じ。

この第1楽章は清新で躍動感が輝いています。冒頭のさわやかなテーマがいい。繰り返し耳に無理なく滑るように入り込んでくる。弦の扱いが特徴的で金管や木管のバランスが絶妙。アチェレランドの掛け方はメンデルスゾーンの天才的なひらめきを感じるし、ブラームスの影響の濃いドヴォルザークの匂いもする。何より素晴らしいのはこのおらが国の作曲家へのロンドンフィルの醸し出す全幅の信頼と共感と敬意、全力ですね。これより巧みな演奏はあるかもしれないけれど、これほど熱い演奏にはならないでしょうね。この楽章は魅力的です。シューマンの『春』とメンデルスゾーンの『イタリア』を足して割らないテンポが生きている音楽です。ドイツ音楽のような崩れない構築に熱い血がたぎるような音楽です。

第2楽章はホルンを追いかけて弦楽がのどかな歌を編んでゆきます。これはブラームスのメロディにならない素朴な歌に似てアンダンテであることの素朴な足取りが時折、ドラマチックなフレーズを通過しながら次第に高まってゆく。これが初めてのシンフォニー?メロディに寄りかからない管弦楽の技法の高さが聴きとれます。再現部のテーマがヴァイオリンの総奏の中で一枚の布が春の風に巻かれて表裏に日差しを浴びるようなぬくもりが繰り返されます。この楽章もいい。

第3楽章第4楽章続けて演奏されます。

はやや仄暗いスケルツォ。速度表記はプレストよりは遅くという感じですが、古典的な舞曲のリズムでありながら、やはり近代のすっきりしたハーモニーが清々しい。チェロのスタッカートに黒い靴の男女がモノクロームの舞踏を見せる。金管のイギリスの田舎風旋律が加わり、急に周りに色彩が戻ってくる。気が付くと麦畑の一面黄色の風景に風が吹き抜けるような景色が見えます。コントラバスのピツイカートを追いかけて音楽は遁走し、次第に速度を上げ、楽章の終わりに向かう。素晴らしい。

古典音楽の枠が一杯になる前に、もう少し前に生まれていればきっとこの作曲家はもっと頻繁に演奏されるべき作品を多く生み出しています。

5つの交響曲が全て同じレベルの高さに完成しています。稀有な事例。まずこの最初の一曲から。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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